2022年7月号
七夕の織姫星として知られる、こと座の1等星ベガは、直径が太陽の倍以上ある星です。太陽が約25日で1回転自転をするのに対して、ベガは約12.5時間で1回転と、遠心力で星自身が壊れてしまいそうな程の猛スピードで自転します。彦星のアルタイルも太陽より大きな星ですが、自転の速度が速く、9時間程で1回転します。天の川を挟んで離ればなれになった二人ですが、それぞれ目が回るほど忙しく働く、似た者夫婦なのかもしれません。
2022年6月号
6月6日は「家族団らんの日」、あるテレビ番組がきっかけで作られた記念日だそうです。近頃、夜明け前の空は、地球とともに太陽を巡る惑星たちの輝きでにぎわっています。今月中旬から下旬にかけて、地球以外の七つ全ての惑星が地平線の上に勢ぞろいします。中でも水星、金星、火星、木星、土星は肉眼でも見つけることができ、古くから知られています。早起きをして、太陽系の家族団らんの様子を楽しんでみてはいかがでしょう。
2022年5月号
「五月蠅い」と書いて、何と読むでしょう?正解は「うるさい」です。旧暦の五月は梅雨にあたり、じめじめした季節に群がって飛び回る蠅(ハエ)の様子を表した当て字です。意外なことに、88星座の中で唯一の昆虫の星座は「はえ座」です。有名な南十字星のそばにあり、残念ながら日本では見ることができません。南半球の星座を作ったのは、大航海時代の観測者たちですが、彼らもうるさいハエには悩まされたのかもしれません。
2022年4月号
4月1日はエイプリルフールですが、春の夜空には嘘をついて大変な目にあった鳥の星座があります。低い位置で目につく小さな四辺形の並びの「からす座」です。神話では、カラスは元々、銀色の翼で人間の言葉を話す神の使いでしたが、噓をついた罰で、言葉を取り上げられ、真っ黒に染められて夜空に磔(はりつけ)にされてしまいました。カラスの姿は闇夜に紛れて見えませんが、カラスを打ち付けた四つの釘が今も夜空で光っているそうです。
2022年3月号
3月は英語で「マーチ(March)」、ローマ神話に登場する軍神マルス(Mars)の月を表す言葉が由来です。マルスの名は、太陽系の惑星の一つである火星の英語名「マーズ(Mars)」にもなっています。近頃、夜明け前の東の空では、金星の美しい輝きが目立ちます。その近くで控えめに輝く赤い星が火星です。今年12月の地球との接近に向け、次第に明るくなる火星も、今はこっそり金星(ヴィーナス)とのデートを楽しんでいるのかもしれません。
2022年2月号
2月3日は節分、「鬼は外、福は内」と各地で豆まきが行われます。「鬼」の頭には角がありますが、夜空にも、おひつじ座やおうし座、きりん座など、様々な角を持つ動物の星座が隠れています。中でも、額に1本の立派な角を持つのが「いっかくじゅう座」です。その角はあらゆる病気を治し、幸運をもたらすと信じられていました。「冬の大三角」の中に隠れた星座ですので、明るく輝く星々の間にその姿を想像してみてください。
2022年1月号
セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロと言えば、一年の無病息災を願って1月7日に七草粥にして食べる「春の七草」です。では、ベテルギウス・リゲル・シリウス・プロキオン・ポルックス・カペラ・アルデバランと言えば何でしょう。赤や青、黄色と色とりどりに輝く、冬の七つの1等星です。大きなダイヤモンドの形に並ぶ星々のように、今年が輝く一年になることを祈りながら、夜空を見上げてみてください。
2021年12月号
夕暮れの空を美しく飾る一番星の金星も、年の瀬が近づくと、急ぎ足で沈んでいくように見えます。後を追う木星や土星が西の低い空に輝く頃、東にはリボンの形のオリオン座が姿を現します。三ツ星を挟んで「赤勝て、白勝て」と、それぞれの色で輝く1等星は、大晦日の勝負の行方を占っているのでしょうか。三ツ星の先にはおうし座の顔が、除夜の鐘を思わせる釣鐘型に並んでいます。夜空でも年末の準備が着々と進んでいるようです。
2021年11月号
「食欲の秋」という言葉がありますが、今月は、天文現象でも「食」が目白押しです。月が金星を隠す「金星食」、木星の衛星同士が隠し合う「相互食」のように、「食」とは、ある天体が別の天体やその影に隠されることを言います。中でも、11月19日の「部分月食」は、手軽に楽しむことができる天文現象です。月の出の頃には月食が始まっています。地球の影に隠されて欠けていく月を、秋の味覚を味わいながらゆっくり眺めるのもいいですね。
2021年10月号
10月には「神無月」という異名があります。全国の神様が出雲に出掛け、不在になってしまうことから名付けられたという説が有名ですが、近頃の夜空はギリシャ神話の神々の星座でにぎわっています。「はくちょう座」や「わし座」は神々の王ゼウス、「やぎ座」は牧場の神パーン、「うお座」は美の女神アフロディーテとその息子エロスです。それぞれ変身した姿が星座に描かれており、その様子はまるでハロウィンの仮装行列のようです。
2021年9月号
9月21日は中秋の名月です。今年はちょうど満月と重なります。太陽の光をはね返して輝く月は、地球の周りを回りながら、日ごとに形を変えていくように見えます。月の表面は、レゴリスと呼ばれる細かい砂で覆われており、太陽に正面から照らされる満月の頃になると、急に明るさが増します。その明るさは半月の10倍ほどあり、月明かりで本が読めるほどです。秋の澄んだ空気の中、ひときわ明るく輝く名月をお楽しみください。
2021年8月号
夜空にきらりと光る流れ星。その正体は、太陽系を巡る彗星や小惑星が宇宙空間にばらまいた、直径わずか数ミリメートル程度の小さなチリです。地球の大気に猛スピードで飛び込み、明るく光ります。たくさんの流れ星を楽しめるのが流星群の時期ですが、それ以外でも、毎日1トン以上ものチリが地球に降り注いでいます。貴重なのは、流れ星そのものではなく、その光に気づけるだけの暗い夜空と、ゆっくり眺める時間なのかもしれません。
2021年7月号
世界の国旗には、太陽や月、星などのシンボルが多く描かれています。星が州の数を表していたり、南半球の国の国旗には南十字星が描かれていたりと、そのデザインから国の特徴や歴史を読み取ることができます。思想や宗教の垣根を越えて、多くの国で採用されている星のシンボルには、自由や未来への希望、団結といった意味合いもあります。どんな時も変わらず輝く星々のように、末永い繁栄を願う人々の想いは、どの国もみんな同じです。